無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
花言葉 ―はかない恋―
『アネモネさんへ
 ご心配、ありがとうございます  宙』
 
 自分の目を疑うように、大きく目を見開いたユキの口から思わず言葉が漏れた。

「うそ…… これだけ?」


 
 いくら3年越しの付き合いとはいえ、所詮インターネットの中だけの友人だ。

 顔も名前ももちろん住所も、相手のリアルな面は何も知らない。

 自分のブログのコメント欄に書き込みがなければ、それだけで縁は切れるもの。ましてや相手は男性だ。更に言うなら男性かどうかすら危ういくらいの関係なのである。

 それを、

『宙さんへ
 お忙しいのですか?
 しばらくお見かけしないので、何かあったのかと心配になってメールしました
 お元気ならいいのですが  アネモネ』

 こんな風に相手のブログに押しかけて、メールフォームからメールまで送ったりするのは、少しやりすぎではいないだろうか……。

 そんな不安な気持ちを抱えながら、書いては消しを繰り返し、えーい!と、勇気を振り絞ってメッセージを送ったのが一週間前。

 それからというもの暇さえあればスマートフォンを覗いた。

 なのに――

 待ちわびた返事は、中途半端な感謝の言葉で締めくくられている。



 これでは生存確認できただけである……。 

 ガックリと肩を落としたユキの背中から、

「ユキー、ちょっとお願ーい」

 ユキを呼ぶ明るい声が聞こえた。

「はーい」
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