籠姫奇譚

それならどんなに幸せだったことだろう。

気付いてもらえなくとも、ずっと傍にいることが出来る。

そこには自分の持っていない確かな『自由』がある。

自由な『愛』が。


「貞臣様、もし、わたくしが明日にでも何処かの旦那に水揚げされるとしたら──貴方はどうなさいますか?」


野暮なのはわかっている。

あぁ、また、この人に困った顔をさせてしまう。
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