籠姫奇譚

珠喜は息を深く吸った。


「そう」


それだけ。そうして、男の手をとった。死人のような冷たく白い手だ。

なぜこの男に惹かれたか。

なぜこの男を愛したか。


車に乗り込み、遠ざかる廓の門を見た。きっともう戻らない、本当の珠喜が居た場所は──。


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