籠姫奇譚

夜な夜な、部屋に連れ込むのは男ばかり。何をしているかなど知れたこと。


「──睦まじいこと」


それは貞臣が珠喜を抱かなかった理由。残酷に、卑怯に、心だけを器用に掻き乱していった憎らしい術。

最初からその気など欠片もなく近付いた。あの男は冷たい男。誰よりも、誰よりも。



それでもきっと、わたくしは幸せなのでしょうと珠喜は口癖のように呟いた。どこか空虚な瞳で空を見ながら。

そうしてやはり、人々を魅了し続けた。屋敷の窓からチラリとでも見ようものなら惚ける。男ばかりか、女までも。


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