チェロ弾きの上司。
チェロ弾きの上司との春〜III〜

そして迎えた4月日曜の午後。
春の定期演奏会当日。

ゲネプロを終え、お客様の入場開始を待つばかり。
練習室では着替えをすませたメンバーがそれぞれ音出しをしたり、さらったりしてる。
あたしはストレッチしながら、心の中でひとりしりとりをする。

「望月さん」
礼服を着た三神さんがにこにこしながら話しかけてきた。
わーかっこいい!
キラキラオーラ満開!

「悪いんだけど、真木が2階の廊下にいると思うから、呼んできてくれない?」

……えぇー、真木さんと個人的に話をするのはちょっと……。

「頼める?」

にっこり笑う三神さん。
これは、三神さん得意の、笑顔のごり押しだ……。



2階客席に向かう廊下。
ほんとにいた。

礼服を着た真木さんは、それはそれはかっこいい。
前回の定演でアカリンが騒いでたのもわかる。

その真木さん、長椅子に座って、長い脚と腕をそれぞれ組み、ぼーっと天井を見ている。

……って、ええ⁉︎
真木さんがぼーっと⁉︎

いつもの自信満々オーラがない。

……もしかして、緊張してる?

うそー。あの真木さんが緊張⁉︎
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