不器用ハートにドクターのメス

「え……もしかして、思い当たる節あるのか?半分冗談だったのに」


言葉を返さないまま回想に突入していた神崎に、堂本は若干の驚きを含んだ、楽し気な声を上げた。

前のめり気味の堂本に対し、神崎は「そんなんじゃねえよ」と悪態をついてみせる。


「聞かせろよー。俺たち、古き良き友達だろー?」

「……うぜえ。なんだよ古き良きって」


堂本のからかいたっぷりの笑みを遠ざけるように、神崎は、乱雑な所作でグラスを持ち上げる。

グラスの中で、溶けきっていない氷がカラン、と小気味よい音を立てた。




< 13 / 260 >

この作品をシェア

pagetop