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さて、その数時間後の、とっぷりと日が暮れたころ。

人から目を反らされる真由美とは打って変わって、他人の視線を一身に集める人物たちがいた。

それは、先ほど登場したばかりの外科医、神崎敬一郎と……その友人である、堂本透だ。

堂本は他病院勤めではあるが、神崎と同じ心臓外科医で、二人は大学時代からの旧友だった。

今夜のように馴染みのバーで落ち合い、飲みながらとりとめなく語るのは、二人にとって、数カ月に一度の恒例行事のようなものであった。

男独特の色香を存分にまとった、精悍な風貌の神崎。

眉目秀麗で洗練された雰囲気を持つ堂本。

そんな長身男二人がバーカウンターに並んで座り、談笑する姿は大変絵になり、店内の女性という女性は、遠巻きに熱視線を送り、彼らについて噂していた。

――やばい。超かっこいいんだけど。芸能人?オーラハンパないよね。なに話してるんだろうね。

ところが二人にズームインしてみれば、残念ながらその会話は、女性陣の期待にそぐわず、なかなかに辛辣なものであった。


「……マジでうぜーんだよ、あのオヤジども」


悪態をつきながら低い声でそう言ったのは、神崎の方だ。

神崎の言うオヤジとは、大学病院の教授たちのこと。

そして、ウザい理由というのは、その教授たちが、たいへん熱心かつ頻回に結婚を勧めてくる、ということだった。

研修医の期間を経て大学病院に就職を決めたドクターは、まず医局に所属しなければならない。

医局に入ってしまってからでは、挙式に呼ばねばならない上司が格段に増え、式が大げさな規模になってしまう上、誰を呼ぶか呼ばないかの選別作業にかなり骨を折ることになるため、それを回避すべく、医局入りの前に早期結婚してしまうドクターがほとんどだ。