雪国ラプソディー

目線を遠くに向けると、小さなお店の前に『臨時休業』と走り書きされた貼り紙があった。
このお店の人は、朝これを貼るためだけに大雪の中やって来たんだ。
きっと、ここだけじゃない。たくさんのお店や会社が対応に追われていると思うと、胸が痛んだ。


「浅見が来てくれて助かった」


さっき呼ばれたときは、何も感じなかったのに。
温もりを感じるほど密着しているせいか、それとも耳のすぐ近くで呟かれているからなのか。


『浅見』と呼ばれて、無性にドキドキした。


「今日は大事な商談だから、絶対に落とせないんだ」


そう言い切った小林さんの声は、とても凛々しくて、更にドキドキが倍増した。

ーーー今、小林さんはどんな表情をしているんだろう。

変な欲が湧いてきたことに驚いて、慌てて打ち消す。

落ち着け、私。
きっとこれは吊り橋効果だから!
ひとり心細いところに来てくれて、安心しただけなんだから!

私はカバンを抱える手に、力を込めた。

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