カエルさんに恋しました
出会い
職場のおじ様に誘われ、タイムカードを押したら直ぐに指定の店へと向かった私。
退職間近な白髪混じりのおじ様に人気なのが、私、田中久美子。今流行りの40代。
自分で言うのもなんだけど、40に足を踏み入れた途端にモテモテ。早くに結婚したが
二人の息子が成人するのを待って間もなく
念願の離婚。あと少しで自由になるのだ。
飲み会に誘われたら喜んで出向く。今夜は異業種交流。どんな人が来ているのか多少気にはなるが、特に緊張とか人見知りとか無い。美味しい食事とお酒さえあれば満足。しかも、四十路とは言え紅一点だ。ほぼオゴリだと践んでいる。こうなれば、よほどの汚男じゃない限り、だれでも構わない。
店は真新しいビルの一階で、直ぐにわかった。開き戸をカラカラと開け中を覗くと、完全和食の店作りに不似合いな、真っ赤なニットのおばさんが「いらっしゃいませ」と甲高く叫んだ。どうみても安いバーのママ風。私を奥へと案内してくれた。そこには先に来ていた同じ職場のおじ様、村田さんがいた。そして掘りごたつの向こうには見知らぬ二人の男性がいた。
なぜだか、その一人の私を見る様子がまるで映画かドラマのワンシーンの様に、ゆっくりとゆっくりと時間が流れて行く感じが不思議で印象的だった。
会釈しながら腰かけて自己紹介する頃には、時間は普通に流れだし初対面のお二人が60歳のおじ様仲間で、特にカッコいい訳でもなくデブでもなく、普通のおじ様だとお見受けしたところで乾杯したのであった。
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