強引な彼の求愛宣言!
◆アクシデントな昼


◆4


意を決して、薄手のストールに手をかける。

かつてこんなにも、会社の女子更衣室で緊張したことがあっただろうか。いやない。



「あれ? 深田さん、その首どうしたんですか?」

「え、」



ぎくり。ストールを外した瞬間かけられた言葉に、思わず身体をこわばらせた。

ブラウスにリボンをつけながら、白石さんがきょとんとこちらを見つめている。



「その、ガーゼ。何かケガされたんですか?」

「ああうん、これね……」



白いガーゼを貼り付けた首筋を右手でおさえつつ、ロッカーから制服を取り出す。



「休み中、ヘアアイロンでヤケドしちゃって」

「え~っ大丈夫ですかぁ? もー、深田さんってばたまーにおっちょこちょい発揮するんだから」

「あはは……」



かわいい後輩の言葉には、思わず苦笑い。

……これ、私のおっちょこちょいが原因なわけじゃないんですけどね。


先に更衣室を出た白石さんの背中を見送り、ため息を吐く。

おととい、武藤さんにつけられたキスマーク。

それを隠すために絆創膏じゃ絶対邪推されると思って、私が考えたのは『逆に大げさに見せてみよう!』作戦だった。

これなら、本当にケガしてるっぽく見えるし。心配してくれるまわりの人たちに嘘をつくのは心苦しいけど、痕が目立たなくなるまでの少しの間だけ、我慢我慢。


……って、なんで私がこんな我慢を強いられなくてはいけないんだ。

元はといえば、武藤さんの悪ふざけが……!
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