キミに恋の残業を命ずる
ドアを出ると、エレベーターが現れた。

位地から察するに、わたしたち社員が普段から使っているのとはちがうものだ。


うちにはエレベーターが二機あって、以前入っていた会社で搬送用のエレベーターに使っていた方は電気代節減のために使用禁止にしていた。

今目の前にあるのはその使用禁止にしている方で、動かないはず。


なんだけど。


課長がボタンを押すと、オレンジの光が暗闇に灯って、すぐに扉が開いた。


「え…どうして使えるの…?」

「使えるようにしてもらったからね」


あっさりと答えた課長の言葉に耳を疑った。

どうやって使えるようにしたの?
誰がそんな許可を?


不安が押し寄せるのを感じながら乗り込んだエレベーターは、この階と別の階を直通するよう設定変更されているようだった。
指定階を押さなくてもエレベーターが動いて、すぐに止まって扉が開いた。

降りた階には見覚えがあった。

ドアののぞき窓から見える様子だと六階にちがいない。
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