キミに恋の残業を命ずる
このビルは七階建てになっているんだけれど、六、七階には部署が入っていなくて、六階については資料や在庫用の倉庫になっていた。だからわかった。


でも、そんな場所に来ても課長の脚は止まらない。


それどころか、近くに設置されている非常階段に近づいていった。


スタスタと階段を昇り始めた課長の後をついていけずに、わたしは立ち止まった。

もう課長の行動が理解できない。


だって、この上の階、七階については、ごく一部の人間しか行けないようになっていて、一般社員はけして足を踏み入れないようにと立入厳禁にされていたから…。


普段使っているエレベーターだって、この階に着かないよう調整されているほどの場所。

単に経費削減の一環で使わないようにしているらしいんだけど、本当は社の極秘製品が保管されているんだ、とか、以前自殺した社員がいたオフィスが最上階だったから…なんてウワサが囁かれていて、みんなはそこを、

「禁断の最上階」

と名付けて、またもや社の七不思議にあげていた。


そんなところに行こうとしている課長。


…あなたはいったい何者…??
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