先生、恋ってなんですか?
先生、恋ってなんですか?


翌日のお昼。
いつも通りに先生はやって来た。
そんなことが嬉しい。

「先生、恋って何なんだろう?」

急にした質問に、先生の戸惑いが見える。

「気づいちゃったんだよね、生まれてこのかた私、恋をしたことがないんだって」
「で?」
「夢がすべてだったし、今でもそれは変わらないけど。何て言うか……」
「告白されて、夢以外に大切なもんがあるかもしれないって気づいた、てとこ?」

こくん、と頷く。

「昨日のデートはどうだったんだよ」
「どうって、……まぁ、楽しかったのは楽しかったよ。でもなんか違うっていうか」
「何が違う?」
「うまく言えないけど。やっぱり店長は店長なんだよ。なんて言うか、もう何年も一緒に働いてるし。んー戦友、てのが一番近いのかな」
「そうか」

そう言って先生はしばらく黙りこくる。
そうだよ。
大切な戦友。
恋を意識したことはないけれど、これは恋心ではない。
それだけははっきりとわかる。
そうして、しばらくして、口を開いたのは先生だった。

「そうだなぁ。そりゃお前の課題なのかもな。……例えば、何でもないときそいつのことが思い浮かんだり。嬉しいこととか悲しいこととか、旨いもんを一緒に分かち合いたいと思える、そんなやつがいたならそれが恋ってやつかもしれんな」

そう言った先生の声がすごく優しくて。

「……先生は?」
「あん?」
「好きな人とか、居ないの?なんで彼女作らないの?」
「……まぁ、好きなヤツは居るが。そいつの彼氏じゃなきゃ意味ねぇしな。そいつが俺のコトなんて眼中にないんじゃしょうがないだろ?」
「押し倒しちゃえば良いのに」
「ばか、そりゃ犯罪だ」
「それもそうか」

とっても、とっても優しいから。
なんだかちょっと泣きたくなった。



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