課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 ふふ、と横に来た雅喜を見て笑うと、なんだ? という顔をする。

「いえ、なんでもないです」

 ドラッグストアに行って、スーパーに行って、課長のうんちくを聞きながら買い物をして、ご飯を作って。

 平和だな、と思う。

 三日したら出ていけ、の三日がそのうち来るだろうが、さっき、料理当番を一週間分決めたから、きっと一週間は追い出されないだろう。

「あ、課長。
 あそこに、最近、美味しいロシア料理の店が出来たんですよ」
と通りを歩きながら指差すと、

「……今日はお前の当番だよな」
と言われる。

 わかってますよう、言っただけじゃないですか、といじけて見せた。

 平和だ。

 実に平和だ。

 だが、そんなことを思うのは、感覚的に感じ取っているからに違いない。

 すぐそこまで、嵐が来ていることを――。
 
 
 




< 291 / 444 >

この作品をシェア

pagetop