課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
婚約してみましょうか?

 


 爽やかな朝だ。
 たぶん……。

 昨日の夜から、今日の朝までが、真湖の食事当番なので、朝ご飯の支度をしていた。

 スマホ片手に。

 何故か、朝から、三上がかけて来て、話しているのだが、あまり内容がない。

 困ったよう、と思っていると、雅喜が、珈琲を淹れてくれながら、切れ、と目で合図をする。

「あのー、三上さん、そろそろ出かけるんで」

 いや、まだ、ご飯も食べてないが、と思いながら、なんとなくそう言うと、
『ああっ。
 ごめんねっ。

 つい、電話しちゃって。
 忙しいのに、ごめんね。

 課長によろしくっ』
と言って切れた。

 真湖はスマホの画面を眺め、なんの用事だったんだ、と思う。

「なんの用なんだ?」
と結局、パンも焼いてくれながら、雅喜が問うてきた。

「……課長によろしくだそうです」

 あれだけ話して、なにも伝えることがない。

 こんなに内容のない電話を聞いたのは初めてだ、と思っていた。

「俺によろしくなら、俺にかけてくればいいだろう」

「三上さん、もう会社に着いてたりとかで暇なんですかね?」
と首を捻る。 
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