課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 二人で慌てて帰る準備をして、新幹線に乗る。

 雅喜と二人で新幹線に乗っているのに、旅に出かけたときとは違い、気持ちは重かった。

「宮島の近くの施設なのか」
と雅喜が呟く。

「それで、宮島にもこだわってたのか」

「ちょっとついでに顔くらい見られるかな、と思って」
と言いながら、泣きそうになる。

「大丈夫だ。
 もう見つかってる頃かもしれないぞ」

 ぽんぽん、と背中を叩いてくれた。

 おばあちゃんが失踪したのは、朝らしく、もう随分時間が経っていた。

 これ以上、思い当たるところもなくなり、真湖に連絡してきたようだった。

 おばあちゃんは普段は、そんなに突飛な行動を起こしたりもしなかったので、施設の人たちも油断していたようだ。

「夜まで見つからなかったらどうしよう。
 夜はまだ寒いですよね」

 そう呟く真湖の肩に雅喜が手を回し、抱き寄せる。

 いつも嗅ぐと落ち着く雅喜の香りが鼻先でした。
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