課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 既に泣いている父親の手から、雅喜に渡される。

 おばさんに連れられてきたおばあちゃんも居る。

 監査役や、専務、礼子たちも、三上と羽村と、浩ちゃんも居る。

 幸せだな、と天井もガラス張りなせいで、空から真っ直ぐ差し込む光を受けながら、真湖は思った。

 小声で雅喜が言ってきた。

「そういえば、お前にひとつ、言ってないことがあった」

 だが、自分で振っておいて、雅喜は言いよどむ。

「俺はお前が……

 もしかしたら……」

 もしかしたら?

「まあ……好きかもしれないな」

 かもしれないな!?

 此処でまだそれかっ、と思っていると、もれ聞こえていたらしい客席から、

「今か?」
「今、それか?」

「まだ言ってなかったのかね」
と聞こえてきた。

 最後のは監査役のようだった。

 いや、私は、この人が、今、言おうと思ったことだけで、びっくりですよ、と思っていたが。
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