鼻を摘んで目を閉じて…
1.戻ってきたあいつ
 うっそ…。
 



 「…誰あれぇ~、超カッコイイ!!」

 「ほら、海外事業部の織崎さんがスカウトしてきたとかって人だよ」

 「ええっ?あれでしょ?ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得したとかいう?」

 「大学からアメリカなんだっけ?」

 「…って、もしかして日本育ち?」

 「そうみたい。お母さんがドイツ人とかで、あの見た目だけど、中身はパーペキ(※完璧)に日本人だわって、戸川さんが苦笑してた」




 パーペキな日本人って、いったいどういう人?と思いつつ、ひそひそ、コソコソ、他の女子社員たちが噂話をするのを横目に、思わず呆然と見入ってしまった。

 これだけ衆人監視状態なんだもん。

 あたしの視線になんて気がつかないと思っていたのに、何を思ったのか、森田部長と話していた‘ヤツ’が怪訝に顔をあげたから、とっさに視線を反らす。
 



 …気がつかれない。気がつかれるわけがない。





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