浅葱の桜
序章〜深紅の世界〜



「美櫻! ちょっと町まで降りない?」

「? 何か用でもあるんですか? 桔梗さん」



私は持っていた荷物を置いて首を傾げた。


お願いっ、というようにして手を合わせた桔梗さん。


私たち旅一座『花鳥座』は全国を巡って芸を披露してきた。


で、今回は初めての京都! 都と言われるだけあって綺麗な場所だなぁ〜。


なんて言っても山の上からしか見てないけど。


でも、怒られないかな? 菊姉ぇたち皆明日の準備で大わらわなのに。



「今日中に行きたいのよぉ〜っ! ね、私に付いてきてくれるのは美櫻だけなの!」



両腕を掴んで振られる。ちょっと、桔梗さん力強すぎますっ!



「わ、分かりましたからっ! ……早く、その用事を済ませてしまいましょう?」



涙目になっていた桔梗さんはぱあっと顔を輝かせる。


私よりも年上な筈なのに子供っぽい所があるんだよね、桔梗さんは。


こんな人が皆を惹きつける舞の踊り手だなんて信じられないなぁ〜。



「じゃ、私、これを置いてきますから。ちゃんと待っていてくれますか?」

「うんっ! ちゃんと待ってる!」



ああ、本当に勿体無い。喋らなきゃとっても美人なのに。


性格幼すぎますよ。


差がありすぎます……。


< 1 / 128 >

この作品をシェア

pagetop