浅葱の桜
池田屋にて
「チッ。動けんのはこんだけか」
と、辺りを見渡した土方さんは苛立ちのまじった声を零した。
ま、それも納得ですけど。
この場に居る隊士の数と今回の仕事の大きさとが見合っていない。
殆どの隊士が夏風邪で動けない状態だった。
こんな時に〜〜っ! って言ってやりたい気持ちもあるけど体が丈夫でない私が言えない。
実際、私がこの時期に体を崩してないのは珍しいのだ。
「おい、佐久」
「はい?」
「テメェはここに残ってろ」
…………
「え?」
「え、じゃねぇよ。お前はここに残ってろ」
「いやいや、私も」
行きます! と言おうとしたのに額に手を落とされて蹲る。
「お、沖田さんッ!」
額を押さえながら彼を睨む。
いきなりそんな事……っ! まだヒリヒリしてる。
な、情けもくれないのかぁ〜!
「土方さんはお前の安全を考えて言ってるんだ。今回はじっとしてろ」
ひょいっと私を軽々と持ち上げた沖田さんはそのまま山南さんの横に下ろす。
私は猫かっ。
「てことで山南さん。よろしくお願いします」
「確かに受け取りました」
私は荷物かっ!