ティアラ
第2章

欲しいもの

自動ドアが開く音。

停まっている車に隠れて、中から出てきた人物を確認するあたしは、にんまり微笑みながら、静かにその時を待っている。

あと3メートル……2メートル、1メートル。

彼の足が自転車の前で止まったとき、あたしは心の中で「今だ!!」と叫びながら、手にしているロープを力いっぱい手前に引いた。

「……えっ」

予想外な展開に目を丸くする。

まるで大物の魚を逃した釣り人のように、あたしはロープを両手で持ったまま、尻もちをついてしまった。

「い……った……」

地面についたお尻をさすりながら、ロープを手元に引いていく。
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