顔も知らない相手

♯03


テストの勝負を受けてから約3週間後ようやく全てのテストが返されていた。
翔は1週間前にテストが返って来ていたみたいで先週はまだ返ってきてないの?まだかまだかとうるさかった。
しかし今週に入ってからはまだ催促を受けていない。
どうしたんだろうか、勝負のこと忘れたのか、忘れたんならこれ幸いとばかりにスルーするしかないな。

それだけテストの結果を聞いてきたのならばおそらく翔の点数は良かったのだろう。
それに比べて私は…。
考えても仕方がない。
翔が何か言い出すまで黙っておこう。
うん、そうしよう。

そしていつものように翔のチャット部屋へ行こうとしたら…
あれ?
いつも画面の左上らへんにある翔の立てているチャット部屋がない。
どーしたんだろ。まだ来てないのかな。
それじゃほかの部屋に入ろうかなー
でも自分の部屋立ててたら翔が気づいて入ってきてくれるかも知れないし
そんなことを思いながら私は自分でチャット部屋を作った。

3人ほど入ってきてくれてその3人と楽しく話をする。
あれから3時間ほど経つが翔は部屋を立ててはいないしもちろん私のチャット部屋にもいない。
今日は来ないのかな。
そしてチャットが楽しいと思っていたはずなのに今翔以外の人と話をしていてもさほど楽しいとは思わなくなっている。
今更こんなことに気づくって遅すぎる気がする。

それから毎日私はチャットに来ているが一度も翔に会うことはなかった。
なんでだろう。なんでってリアルが忙しくなったからだろうけど。
つまりチャットなんてすぐにやめられてチャットでしか関わりのない私には彼がどうしているのかなんて分からないんだ。


翔がいないとなんか盛り上がらないし楽しくないなーって思いながらチャットに来てもう2週間。
でも今日は来てるかな。今日はいるかも。そんな事を思って毎日チャットを覗いてしまう。

「あ!こんばんはsoraさん!お久しぶりです」
そう言ってチャット部屋に入ってきたのは優梨ちゃんだった。
勝負を持ちかけられたあの日から優梨ちゃんとは会っていなかった。

「その後あのテストの勝負どーなったんですか??」
優梨ちゃんもきっと気になっていたのだろう。
挨拶もそこそこに聞いてきた。
「それがやっとテスト全部返ってきたと思ったら最近翔の姿が見えなくて会ってないんだ」

「そーなんですかー私この間会いましたよ。」
うそっ!なんでいつだろう。私毎日来てたのに。
「その時翔にsoraさんに会ったら伝えてって言われてたんですけど自分で言えばいいのになーってそのときは思ってたんですけど最近会ってなかったからなんですね」
優梨ちゃんが私に説明しているのか自分が整理して納得しているだけなのか分からないがそう呟いた。
私はそれよりその伝えて欲しいと言われている内容が気になった。
「翔なんて言ってたの?」
そう急かして優梨ちゃんに聞くと。

「『逃げるなよ』らしいです」

はい?
全っ然意味わかんない。
何に対して!?

「ほ、他には何か言ってなかった?」
これだけじゃ流石になんのことか分からないと優梨ちゃんに聞き返したが「特には~」と軽い返事が返ってきた。

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