若の瞳が桜に染まる
レモングラスと事件
一日中雨が降りしきるこの日、トキオノのオフィスには誰も人がいない。定休日の今日は我久も日和も屋敷にいた。

我久は足だけを縁側に放り投げ、畳の上で寝転がって強い雨音に耳を傾けていた。
こういう足音が消される雨の日には、良からぬことを企む輩が出てくるんだよな、なんて考えてしまうところを見ると、やはり天祢組の血を引いている。

最近茶島会の動きが怪しいと耳にしている影響もあるのだろうか。

ちらりと隣を見ると、縁側に座って植物の本を読む日和がいる。

お互いの思いを知ってからというもの、こうやって別々のことをしながらも、自然と近くにいることが多くなっていた。
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