若の瞳が桜に染まる
ラクウショウと希望
目を覚ましてはじめに目にしたものは、茶色い天井だった。
それは部屋の天井ではなく、ベットの天井。身体を起こして部屋を見回すと、絵画や骨董品が置かれている。
洋風の部屋であることがわかった。

大きな窓からはラクウショウの木がベランダに迫る勢いで生い茂っているのが見えた。景色から、二階だということがわかる。

「目が覚めたみたいだね」

ぼーっとする頭で声のした方を向くと、そこには楠井が立っていた。

その姿を見た瞬間に全てを思い出す。どうして自分がここにいるのかも、我久を置いてきてしまったことも。
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