それを愛と呼ぶのなら。【完】
Precious days of for four manths.




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「あれ?本城さん?」




そんな声が、カウンターの二つ隣の席から聞こえてきた。

仕事帰りに立ち寄ったいつものバーで、カズさんと仲良く話をしている男の人。



黒縁眼鏡とやけに活舌の悪い独特の声に、思わず振り向いてその顔を見た。




「三宅さん!?何してるんですかこんなところで?」


「いやいや、こっちのセリフでしょ。何してるんですか?」


「結構いるんですけど…。今日は、お腹空いたのでご飯を食べに。三宅さんこそ、どうして?」


「俺は、カズさんが本店にいた時から知り合いで、付き合いは長いんですよ。最近は良く来てるんですけどね」


「そうなんですね。でも、ゆっくりお話しするのも、ここでお会いするのも。ほとんど初めてですよね?」


「確かに。そうだ、せっかくなんで隣座ってもいいですか?」


「どうぞ」




顔をくしゃくしゃにして笑う姿は、とても人懐こい。

その姿に思わず笑顔になった。



三宅さんは、会社の同僚。

と言っても、私は部署も会社の場所も違うので、中々会うことはない。

以前本社勤務の時は同じ部署だったけれど、接点はほとんどなかった。




細身の身体。

黒縁眼鏡。

甘ったるい声。

活舌の悪さ。

私よりも少し低い身長で、(私の身長は170センチを超えている…)いつもおしゃれな細身のスーツを着こなすその姿は、多少なりとも人目を引く姿だった。



長い睫毛が揺れる黒目の大きな目は、近くで見るととても綺麗な瞳をしている。

優しくて、穏やかな。



その人が馴染みの店の空間にいることに違和感を覚えつつ、二人でグラスを合わせて乾杯をした。




「本城さん、いつも一人ですか?」


「はい。大抵は」


「暁は一人じゃない方が珍しいよな。まぁ、後から涼一が来て、一緒に帰ることが多いけど」


「今はそれもないからね。一人ぼっちですよ」




カズさんが補足の説明をしてくれる。

本当に三宅さんと仲がいいみたい。




「涼一…ってあの可愛らしい男の子?この前の?」


「あぁ、悟はこの前会ってるよな。少し話に出てただろ?暁の彼氏だって」


「なんか覚えてるわ、彼。へぇ~、意外。本城さん、ああいうタイプと付き合ってるんだ」



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