ゆえん
第一章 湖面の月

Ⅰ-Ⅰ

 
窓から外を見ると雨が強く、遠くで雷の音がしていた。冬真は小さく溜め息を吐いた。 


「そろそろタクシーを呼ぶか」


「私も行く準備が終わったし、通り道だから一緒に乗っていけば?そのほうが真湖も喜ぶよ」


沙世子が笑顔で提案した。


「そうだなぁ。じゃあ、一緒に乗って行こうかな」


次に冬真の目に映ったのは、泣きじゃくる真湖と、悲しげな表情の沙世子の姿だった。


「沙世子?どうしたんだ……。真湖が泣いている……」


二人の姿が遠く薄くなっていき、冬真が手を伸ばしても触れることが出来ない。



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