抜き差しならない社長の事情 【完】
第五章 抜き差しならない社長の事情
そわそわと階下を見下ろしては
「―――― ハァ」
と深いため息をつく。
そんな切野社長を、怪訝そうに首を傾げてみていた神田専務は
「どうかしたの?」と曄にこっそり聞いた。
「さぁ……」
2人が振り返った先では、
右に行ったり左に行ったりしながら、相変わらずため息をついている切野社長がいて、
社長はしばらくそんなことを繰り返していたが、
ふいに慌てたように廊下を走って行った。
神田専務と曄は、早速社長が階下を見下ろしていた場所に行って、
社長を探していると、
2階のオープンスペースを歩いている切野社長が見えた。
「あ……」
社長が足早に向かう先にいるのは……
「ウフフ、やっぱり紫月さんだ」