ナイショの恋人は副社長!?
約束


「あと二日で、ドイツに戻らなくちゃいけないのね……」
 
ホテルのロビーで外を眺め、ドリスはぽつりと呟く。

「どうした? やけに物憂げな声だな」
 
そこに背後から合流してきたヴォルフが、ドリスを見下ろして小さく笑った。

驚いた目でヴォルフを見上げたドリスは、フイッと顔を逸らす。

「……別に。なんでもないわ」
「サオトメに振られたか?」
 
核心を突かれたドリスは、ヴォルフに顔を背けたまま唇を噛んだ。
そして、表情を取り繕うとヴォルフを見上げ、気丈に振る舞う。

「失礼ね。ハッキリと言われたわけではないわ。ただ……彼の心には、別の女性がいそうな雰囲気がしただけで」
「……へぇ。なぜ、そう思ったんだ?」
 
ヴォルフは片眉を上げ、オーバーリアクション気味に尋ねると、ドリスは再び視線を泳がせながら目を逸らした。

「そんなこと、言葉じゃ説明できないわ。女には、そういう感知能力が備わっているのよ」
 
小声でボソボソと答えると、ヴォルフはドリスの向かいのソファに腰を下ろす。
長い足を組み、高圧的な態度でドリスを問い質した。

「その感知は、何がきっかけなのかと聞いている」
 
その鋭い視線に負けたドリスは、苦虫を噛み潰したような顔で説明する。



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