過保護な彼に愛されすぎてます。
nine



郁巳くんは、小さいころから、それはそれは美形だった。

どこに行っても「ボク可愛いわねぇ!」と言われ、気付けば周りを囲まれることも多く、それを本人もニコニコと笑顔で返していたのだけど。
それが変わったのは、小学校中学年のころからだ。

可愛い、と褒めて近づいてくる大人のなかには、純粋にこどもを愛でる以上の感情が籠った目で見てくる人もいて。
常に人の視線を集めてきた郁巳くんは、そういう眼差しに敏感だった。

『お菓子をあげるからおじさんと遊ぼう』
『ゲームがたくさんあるからウチにおいで』

荒い鼻息でそんなことを言ってくる大人たちに、郁巳くんはじょじょに心を閉ざし、たぶん、今思うと一時期人間不信のような症状にまで陥っていた。

担任の先生にも変な目で見られて、写真を撮られたり、ベタベタ触られたりしていたんだから、そうなっても当たり前だった。

そんなことばかりが繰り返されるうちに、郁巳くんは、小学校の登下校も、休みの日も。私の傍から離れようとしなくなってしまった。

たぶん、小さいころから幼なじみで気心の知れてる私しか、気が許せなかったんだと思う。
郁巳くんの両親は共働きでいつも忙しそうだったから、余計に。


中学生に上がってすぐに170センチを超えた郁巳くんは、サッカー部に入って身体つきもガッシリとしたから、さすがに連れ去られそうになったりってことはなくなったけれど。

向けられる汚い視線は変わらなかった。

『いい年して話しかけることもできないで見てるとか、すげぇ気持ち悪い』
『俺のこと性的な目で見てくるとか、もう病気だよね。昨日もじっと見てくる中年オヤジがいたから、〝気色悪いんだよ〟って笑ってやった』

郁巳くんは、それまでの嫌な経験のせいか、なんだか口の悪い子になってしまっていた。



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