過保護な彼に愛されすぎてます。
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「なんか、最近たまに怖いんですよね。郁巳くんが」

職場の後輩である吉原さんが、私の言葉を聞くなり、切れ長の一重の目をパチパチと瞬かせた。

黒い短髪の下、凛々しくて男らしい眉がぴくりと動く。
言葉をあてるなら、〝なに言ってんだ、こいつ〟って感じの表情を見ながら言う。

「これは、吉原さんが郁巳くんの高校時代からの先輩だってことを踏まえて、その上で聞くことなので内密にお願いしたいんですけど。
郁巳くんの執着心っていうか、そういうのって少し度が超えてませんか? 最近、なんとなくそんな気がしてきて」

吉原さんは、郁巳くんの一年先輩だ。
同じサッカー部ってことですごく仲がよくて、たまたまだけど、大学も同じところに行っていた。

サッカーが強いと有名の大学で、しかも偏差値はそこまで高くないから、サッカー馬鹿と言っても過言ではない吉原さんや郁巳くんがそこに決めたのは、自然な流れだったんだろう。

吉原さんは、今年四月にこの会社に入社してきたから、働き始めてまだ半年足らず。
そして、一方の私は、高卒で就職を決めたから、今年で四年目となる。

つまり、吉原さんは職場では後輩だけど、高校時代は先輩で、年も上という、複雑な関係。

でも、部署も違うから、高校時代の先輩後輩の関係を継続している。

仕事の合間の昼休み。たまたま食堂で一緒になり、吉原さんが『おう。ここいいか?』と向かいの椅子を引いたのが五分前。

私の『郁巳くんの執着心っていうか、そういうのって少し度が超えてませんか?』という問いかけを受け、吉原さんは眉を寄せ口の端を上げた。


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