過保護な彼に愛されすぎてます。
zero


土曜日、朝六時半。
うるさいインターホンを無視していると、外から勝手に鍵が開けられ華麗に不法侵入された。

あげく、ベッドのなかにいたところを強引に起こされ、カウンターテーブルの前に座らされる。
朝日も郁巳くんもまぶしくて、起きたばかりの目に毒だ。

「今日は、奈央ちゃんの家に行って、おじさんとおばさんに挨拶しなくちゃだし早く準備しないと」

キッチンでふたりぶんの朝ごはんを作りながら、郁巳くんがご機嫌に言う。

「え……それ、本気だったの?」

きちんと付き合うようになったんだし、それを両親にも言った方がいいんじゃないかと郁巳くんが持ちかけてきたのは昨日の朝だ。

昨日も叩き起こされたばかりで頭もよく働いていなかったから、適当に〝そうだね〟とか答えた気がするけど……。

「本気だよ。挨拶は早い方がいいし」

軽い調子で言った郁巳くんが、焼き上がったトーストをお皿に乗せながら「親公認ってなれば、奈央ちゃんも逃げられないし」とか続けるから、ぞわっとする。

受け入れようとは思ってるけど……そんなカジュアルに病んだ部分を見せられても温度差に困る。

「……逃げないよ」
「まぁ、逃げたところでもう外堀埋めたからどうにもならないけどね」

さらりと言われた言葉が引っかかった。
外堀……と考えながら、スクランブルエッグを作る郁巳くんを見て眉を潜める。

「もしかして……うちの両親と、よく会ったりしてる……?」

郁巳くんは、スクランブルエッグを白いお皿に分けてから、もう一度フライパンに火をかけ、今度は冷蔵庫から取り出したベーコンを焼き始める。

「んー、まぁ、そこまでじゃないけど。モデルの仕事でなにか珍しいもんもらうたびに届けて、奈央ちゃんの近状とか話したりしてるだけ。
奈央ちゃんが全然連絡寄こさないから、俺が報告にきてくれて安心するって言ってた。ダメだよ、ちゃんと定期的に連絡入れないと」

知らなかったことを言われ、何も言えずにいると、ベーコンをジュウジュウ焼きながら郁巳くんが続ける。


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