君を愛さずには いられない
γ.封印したい過去
俺は佐竹仁。

どうしようもなく女受けするマスクを黒縁メガネの奥に隠し

太い首と厚い胸板にガッチリとした腕

疑うほどの長い脚と腰高に加え

キュッと締まった小ぶりなヒップ

そのすべてをスーツで覆い

凍てつくような視線で

俺は言い寄る女性社員を片っ端から追い払っていた。

なぜなら年上の女上司高岡ユリにのぼせ上がっていたからだ。

ユリにはいいようにこき使われ

1年前ポイと捨てられた。

付き合いは短く

あっという間の6ヶ月だった。

その後の立ち直れない程ツラく

すさんだ日々を

どうやって過ごしたか記憶になかった。

仕事に完全復帰できた時

俺はゆがんだ人格のまま

残りの人生をただ時間の流れるに任せ

無味乾燥な毎日を

グダグダを引きずり

クサクサとした気持ちしかなく

ギスギスとやさぐれた有りさまで

最低の男に成り下がった。

それは自他共に認めることとなった。

それでも俺には仕事があった。

俺から仕事を取り上げたら何も残らない。

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