君を愛さずには いられない
θ.再び
河村のBFはあちこちにいた。

休暇のたびに彼女がそのあちこちを訪れ

トレッキングやキャンプを楽しんでいることは

彼女の土産話からわかっていた。

日本にいる時とはまったく違い

かなりアクティブであると知り

俺はLAに連れて来たことに満足していた。

勿論ビジネスに関してもだ。

彼女は柔軟で細かい部分にも気付けた。

それは生まれながらに持った性分であり

将来は父親の片腕になること間違いなしだ。

この2年でカナダ支部は現地の人間を教育し支社内も落ち着いた。

パレットの連中が懐かしかった。

中野は俺の異動前に引き継ぎを含むすべての雑務を

完璧にしかもたったの2週間でやってのけた。

局長いわく彼は爽やかな印象の影に

まったく別の人格を巧みに隠し

ビジネスにおいてどう立ち回れば

回りの人間に自分の描くような動きがさせられるかを

知り尽くしていた。

俺はパレットの平穏な日々に戻りたかった。

だが局長はそうさせてくれないだろう。

中野に帰国する旨をメールで送った。

荷物をまとめながら思った。

河村は別れを言いに両親と過ごせる最後の週末を楽しんでいることだろう。

俺は河村を日本に連れて帰らなければならない。

彼女をこのままLAに置く権限は俺にはない。

局長に示談したら俺までここに残される。

一方ユリは米国人と婚約し

カリフォルニアに新居を構えた。

彼女は河村と同様自由を重んじ

活力溢れる女だ。

俺とは生きる世界が違いすぎたし

またキャシーが言っていたように

ユリとのことはラッキーな経験だったと思えるようになった。

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