クールな御曹司はウブな彼女を乱したい〜抱き尽くされる溺愛初夜〜
5、意地悪な彼
夢を見ていた。

小さかった頃の夢。

『ごめんね。今日もすぐには帰れないの。ひとりで大丈夫よね?』

受話器から聞こえる母の声に、私はいつも『うん』と小さく頷いた。

こう聞かれてしまっては『大丈夫じゃない』なんて言えない。

言ったら嫌われるって私はそう思ってた。

だって、私はお姉ちゃんみたいに可愛くて何でも出来る子じゃなかったから。

父は映画監督で、母は女優、そして……姉も母と同じ女優。

家族で一般人なのは私だけ。

私だけ違うっていうのは幼稚園の頃からわかってた。

テレビをつければドラマやCMに母や姉が映っていて……実際に二人と過ごす時間より、テレビの中の二人に会う時間の方が多かった。

父は海外を飛び回っていて会えるのは年に数回。

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