◆Woman blues◆

破局

◆◆◆◆◆◆

一週間後。

「夢輝さん、一緒に帰りましょう」

「ダメ」

「けど、めちゃくちゃフラついてますよ」

「あのね、これは酔ってるからじゃないのよ。トイレに立った時にグキッてなったの」

今日は鮎川太一の歓迎会だった。

私はニコニコしながら後をついてくる鮎川太一を振り返り、そのモデルのような姿をしげしげと眺めた。

ああ、あの状態がまだ続いてるなんて。

鮎川太一の入社当日、デザイン一課の面々の煩さかったことといったら!

わがデザイン一課は、山瀬純哉課長が四十代で、チームリーダーの私を含め三人が、三十代。

それに加えて二十代の男女が二人、そこに鮎川太一が新しく加わり総勢九人となった。

挨拶と一通りの自己紹介が済んだ後、案の定鮎川太一は、入社三年目の一番若くて女子力高い宮川怜奈さんと、麗しい二人の三十代女性である南さんと夕夏さんに取り囲まれた。

「鮎川さん、何歳ですか?」

「ヘッドハンティングって、本当?!」

「身長は?モデルより素敵ーっ」

「趣味は!?」

そりゃ聞きたいよね、イケメンだもんね。

甘めの顔立ちの割には、微妙に漂うワイルドな雰囲気。

可愛いだけじゃないところが、たまらなくソソられる。

鮎川太一はフワリと微笑んで皆を見回し口を開いた。

「先月三十歳になりました」
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