すべてが思い出になる前に
5) 8年後の25歳の夏




時は流れて、8年後。


蝉が鳴き始め、夏だと感じ始めた頃。



1人の男性が白衣のポケットに手を突っ込みながら、スタスタと廊下を歩き、ある部屋の白い扉をガチャっと開けると


見当たる限るガラス器具や試薬が所狭しと並んでいる一角で、一人黙々と研究をしていた俺の左肩を叩き、カップコーヒーを机に置いた。



「お疲れ、たまには休めよ」


「はい。先輩、今日は何時まで残りますか?」


「もう俺帰るよ、最後お前だけだから戸締りよろしく」



先輩が研究室を後にした後、机に置かれたコーヒーを一口含んだ時だった。




< 98 / 369 >

この作品をシェア

pagetop