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六月、オフィス二階の窓に目を遣ると、雨がシトシトと降り続いていた。

時刻は十二時十分。うちの部署は各自のタイミングで昼休憩を取る方針で、空腹を感じた私はそろそろお昼休みに入ろうかと考えていた。

雨の中を外に出るのは嫌なので、今日のランチは社食で済まそう。

自分のデスクでノートパソコンに向かって座っている私は、作業の手を止めて足元のショルダーバッグを探る。

お財布を取り出したところで、隣のデスクとの境にある電話が鳴り出し、受話器を取った。


「お待たせ致しました。マスコ化成株式会社、ライフサイエンス事業部の横山です」


その電話はうちの取引先、大手化学メーカーから掛かってきたもので、『担当の横山さんをお願いします』と言われた。

私も横山だが、相手が指名したのは同じ部署に所属している別の横山という男性社員。

あいにく彼は不在で、言づけを承り、折り返し連絡する旨を伝えて受話器を置いた。メモ用紙に用件を書き込んで小さな溜息をつく。

横山くんへの伝言か……嫌だなと心が素直な感情を伝えてくる。

私ではなく別の女子社員が今の電話を取ったなら、きっと喜んだだろうに、とも考えていた。

席から立ち上がり、壁際にあるホワイトボードの前に立つ。

そこには出張や外勤、フレックスタイム利用者の出勤予定時刻などが書き込まれている。

横山くんの欄を見ると、昨日までインドに出張で、今日の出勤予定は十二時となっていた。

十二時過ぎているけど……。

もうすぐ出勤してくるだろうと分かったので、彼の机にメモ用紙を置いて昼休みに入ることにする。

そこに「紗姫、お昼行こう」と後ろから声を掛けられた。

振り向くと、小柄でカフェオレ色のミディアムヘア、見た目がふんわり癒し系の女子社員が、薄ピンクの財布を手に私に微笑みかけていた。

彼女は浅倉桃香、入社六年目の二十七歳。

見た目と違い、中身は竹を割ったような性格で姉御肌。私と同い年で同じ部署の同期だが、いつも私のメンタル面を支えてくれて、頭が上がらない。

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