島本課長は50代の中肉中背の男性。

愛妻家で大きな子供もいて、入社以来私にアプローチしてきたことは一度もないので、男性の中では苦手度がかなり低い方。

それでも一緒に通勤する場面を自分に置き換えて考えてしまうと、「不運だったね」と、そんな感想をこぼしてしまう。

同情する私に桃ちゃんは明るく笑って頷く。

「島本課長は嫌いじゃないけど、始業前から仕事が始まってしまった気分になるから、できれば避けたかった」

嫌いじゃないけど……その言葉を聞いた途端に、心がズキンと痛んだ。

桃ちゃんとのおしゃべりで、折角気持ちが上向きに修正されたところだったのに、また急降下してしまう。

横山くんに、本当は嫌いじゃないと言った方がいいのかな……。

でも、それならどうして泣いたり震えたり、逃げ出したりするのかと問われたら、答えに困るし……。

5日間、思考は同じところをグルグルと回るばかりで、解決策は見えてこない。

今も自分の考えの中に沈んでしまった私に「紗姫?」と呼びかける声がした。

「あ、ごめんね!
もう一度、言ってもらえるかな……」

会話を無視してしまったのかと焦る私に、桃ちゃんは眉をハの字に傾けて心配してくれる。