Love Cocktail

Gibson

*****



あれから2ヵ月。

ホテルのラウンジバーにも馴れた頃。
秋も過ぎ、暖かそうな服装の人達がちらほら。

シェーカーを振りながら、顔だけは笑顔で溜め息をつく。

最近、お客様でカップルがやたらと目立つなぁと思っていたら、そういえばクリスマス前だったことに今更気が付いた。

クリスマスに向けて、寂しい者同士でくっつけばいいって訳じゃないでしょう?

だいたい、女性は“お酒ってよく解らな~い”などと言いつつ、男性に注文を任すから、結局、定番のスクリュードライバーか、カシスオレンジになるし……。

もしくは凄く強いカクテルとか。

「吉岡……」

カウンターから手が伸びて来て、スコンと頭を叩かれた。

「あら。オーナー、お久しぶりですぅ」

呆れた顔のオーナーに、にこやかに挨拶をする。

「君は、その癖がまだ直ってないのか?」

「……カウンターにお客様がいる時はしませんよぉ」

どこから、口にしていたんだろうかと考える。

「……クリスマスの辺りからだ」

ご丁寧にオーナーが教えてくれながら、カウンターのスツールに座った。

なんとなく暗い表情をしているから首を傾げる。

「吉岡。君のシフトは?」

ホテルのラウンジは3人のバーテンダーでシフトを組んでいた。

一日2名体制で、私とチーフバーテンダーの中根さんが基本。

私か中根さんが休みの日か、週末だけバイトの庄司君が入る。

……で、忙しい時間帯が過ぎると2名のうち1名が休憩に入り、戻ってきたところで片方が23時に上がる仕組み。

「中根さんが休憩から帰れば上がりですが?」

「明日は何時から?」

「明日は休みです」

オーナーは微笑みながら小首を傾げた。

いったいなんだろう?

「久しぶりに飲み比べをしないか?」

「またですかぁ?」

どうせ勝負にならないくせに。

「……今日は勝てそうな気がするだよね。なぜか」

笑顔を浮かべているけど、何かが妙だった。

「何かあったんですかぁ?」

「別に、何もない」

そう言って首を振るオーナーにまた声をかけようとした時、中根さんが帰ってきた。

「下で待ってるから」
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