その男、猛獣につき
猛獣の、柔らかな部分


ザァザァと音を立てて、バケツをひっくり返したような雨が降っている。


「はぁ。私、雨女だったりして。」


私は誰も居ないリハビリ室の窓から歯みがきをしながら、どしゃ降りの外を眺める。


土曜だった昨日は、午前中だけの診療だったから、午後からずっとパソコンに向かってレポートをどうにか終わらせた。



それもこれも、ずっと病院に籠っていたくなくて日曜日の今日こそは、コンビニにコンタクトの洗浄液を買いに行くついでに、興梠先生に借りた自転車でこの辺りを散策しようと思っていたからだ。



それなのに、レポートが一段落していつもより少しだけ遅い時間に起きたらこのどしゃ降りの雨。


あぁあ。仕方ないか。

今日は籠城するしかないや。

お昼、厨房に要らないって言ってたけどご飯出してくれるかなぁ。



こんな雨の日はただでさえ気分が滅入るのに、今日は病院に籠城となるといつも以上に気が滅入ってしまいそうだ。


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