どうすればいいのかわかりません!
どうすればいいのかわかりません!
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「君は、嬉しそうに食べますね」

ええ、もちろん。

小さな頃から『幸せそうな顔をしてご飯を食べるね』と言われてきた。

食べることが大好きで、人間、食べたいものを、ちゃんと食べれるだけ幸せだと思う。

そして続いて言われるのが『そんなに食べるとますます太るよ』だ。

ええ。まるまるっとしていますよ。

イマドキ女子がスラッとスレンダーなスタイルを維持しているのに対して、私はちっちゃくて、しかもぽてっとしていますとも。

だからどうだと……。

「ちょっと、リリ」

隣から肘鉄をくらって、痛みに涙が出そうになった。

「な、なに?」

横を向いたら親友のミホ。

そして目の前には、おしゃれな黒縁眼鏡をかけた無表情男子と、どこかチャラい茶髪の兄ちゃんが……。

ここがどこだか思い出して、ハッと我に返った。

美保に『美味しいリコッタチーズのパンケーキが食べれるんだよ!』という甘い言葉に騙されて、参加した街コンとかいうの。

いや。正確には騙された訳じゃあない。間違いなく“新しい出会い”を求めて来たんだけど。

見上げると天井には向き出しの配管。
吊るされたり取り付けられたり、大小様々で雑多に見えて、何となくセンスを感じさせる照明器具たち。

ちょっとベージュの壁には、たくさんのアルファベットが白い文字で書かれていて、単なる巨大な時計の絵が描かれているんだなと思っていたら……実は本物の時計だった。

外は雨だけど、綺麗にライトアップされた観覧車が見え、どこからどう見ても、お洒落でロマンティックなダイニングカフェ。

そこに可愛らしいファッションの女の子たちと、かっこよくキメた男の子たち。中には、めちゃめちゃ背の高い人もいて、やたら目立つ。

お料理やスイーツは美味しいけど。
もしかしなくても、私には場違いなんだよねー。きっと。

「亀井梨理と申します」

それでも意を決して来たんだから、自己紹介しなくちゃね。

だけど、目の前のパンケーキの誘惑に勝てずに、ニッコリと頬張ったら、眼鏡男子の眼鏡が光った気がした。
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