理想は、朝起きたら隣に。


ぼんやりした視界の中、もぞもぞと布団の中へもぐりこむ。

すると、どうやら下着だけの姿で眠っていた。

昨日の記憶が、慶斗さんを見つけた時点からあやふやというか、緊張していてほぼ覚えていない。きっと緊張の糸が切れて、帰った途端に眠ってしまったんだ。

さっき本棚から本が崩れる音がしたのを思い出し、寝返りを打った。

「!?」
すると、布団から推理小説を握った手が見えて、思わず固まった。


ごつごつした腕には、私の給料では手を出せないような高級時計が外されないまま。

「ん。ん~~?」

眠たそうな声がして布団を身体に絡めたまま、私はベットから落ちた。

ぺちんと情けない音と共に彼が上半身を置き上がらせた。

「大丈夫?」
「だっだっ」

大丈夫なわけがないのに、口をぱくぱくさせる私に彼はにやりと悪魔のごとく笑った。

昨日見た、びしっと決まった髪型は、前髪が垂れてちょっと幼く感じられ、にやりと笑った顔は、意地悪なのに甘くて。
胸が痛くなるぐらい高鳴った。
でも問題はそこじゃない。

「なんで、い、い……一緒のベッドに眠ってるの?」

< 26 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop