理想は、朝起きたら隣に。


その夜は、忘れたくても忘れられない。
熱くて、薔薇の棘が刺さったみたいに熱い痛みが体中を支配した。

それも絡めてくれた指先と、重なった口付けが優しくて。


頬に触れる慶の指先が愛しくて。


必死で背中に腕を回しながら、もう二度と離れたくないと強く強く抱きしめた。


高嶺の花だと遠巻きにされていた私を、―――きっと彼は一番よく分かって見てくれている。

それだけでも嬉しい。


きっと彼は、壁の花になって一人でぽつんと私が居ても、隣で一緒に黙っていてくれそうな人。


貴方のその、無言なのに優しく包み込んでくれる空気が大好きです。

ずっと、ずっと大好きです。


好きだと彼に素直に言えて、それがどうか伝わりますように。

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