花京院家の愛玩人形









「…岸○パパかな」


暫しの沈黙の後、要は茫然と呟いた。


「…そんな風に仰らないでくださいまし。
彼は、常時ガスマスクを着用している胡散臭い中年マッド・サイエンティストではございません…はずですわ…」


暫しの沈黙の後、紫乃もまた茫然と呟いた。

そりゃ、緊迫した状況も忘れるわ。
盛大にポカンとするわ。

だって、ドアノブに手をかけて廊下に立つ信太郎サンときたら、紫乃の言葉通りガスマスクなんて被ってンだもん。

腹回りの高い位置でベルトをしめたスラックスに長袖ポロシャツをIN、なんて休日のオッサン丸出しファッションの男が、ガスマスクなんて被ってンだもん。

迷走しすぎだろ。

けれど、眩暈を覚える二人を置き去りに、登場した痛キャラさんは意気揚々。


「フっフっフ…驚いたかね?
それとも、身体の自由が利かなくなっていく恐怖で、まともに声も出ないか?」


芝居じみた仕草で両手を広げた信太郎は、悪役らしい含み笑いを漏らした。

いやいや…

まともに声が出ないってかボソボソとしか喋らないのは、デフォだから。

身体の自由が利かないのは…


「一酸化炭素か」


信太郎の足元に転がる45L型のガスボンベに鋭い視線を送り、要は言った。


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