不意に聞こえたその声は。

レコードの回転数を下げた時のような、低くノイズ混じりの不快な声は。

確かに目のないビスクドールから発されていた。

『シバラク前カラ 来テイタ』ということは、先日要がリビングで目撃したのはこの人形…

いや、きっともう、そうではない。


「ソロソロ返シテモラオウカ。
ソノ目ハ 俺ノ目ダ。
俺ノ片目ニナルハズダッタ 宝玉ダ」


妙なモノに憑かれ、人形ではなくなってしまった『アレ』が、人声ではとても不可能な低音で言った。

要と紫乃が、頭を抱えて床に蹲る信太郎を素早く振り返る。


「アンタ…コレ、盗品なの?
僕を泥棒呼ばわりしといて、そもそも盗品だったの?」


「本当ですの?信太郎さん。
わたくしの目は、あのお人ぎょ…
あの…あの…んん?
あの方のモノだったンですの?」


「ソノ通リダ、人間ノ少年ト人形ノ少女ヨ。
長イ時間ヲカケテ ヤット見ツケタ『死せる生者の宝玉』ヲ。
既ニ俺ノチカラヲ 半分注ギ込ンダ 宝玉ヲ。
ソノ男ハ、目ヲ入レテ完成サセテヤルト 俺ノ持チ主ヲ騙シ、奪ッタノダ」


割れた窓からスルリと部屋に入ってきた『アレ』が、信太郎の代わりに答えた。

表情が動く、なんてホラーじみた変化はないが、『アレ』は確かに嘲笑っていた。

この状況を楽しみ、一人嘲笑っていた。


「サァ、モウオ喋リハ オシマイダ。
俺ノ目ヲ返セ。
盗ンダ物ハ ゴメンナサイシテ返スノガ、人ノ道ナノダロウ?
ククッ 俺ニハ理解シ難イガナ」