好きだと気づく30センチ
授業中の
 春の心地よい空気は教師の話す呪文に力を発揮して、私たちを睡魔へといざなう。私は必死にあらがう。

 だけど、隣からは微かな寝息。

 そちらに目を向ければ案の定、クワガタのだらしない寝顔。

「…起きなよ」

「すぅー……」

 授業中にこんな堂々と爆睡できるなんて、恐るべしクワガタ。

 それから何度か起こそうと、消しゴムをちぎって投げたり、シャーペンで腕をつついたりしても、反応なし。

 いつ先生に気づかれるか、いやもう気づかれているに違いない。
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