追いかけっこが、終わるまで。
4. 忙しい1週間
目が回る忙しさってこういうことを言うのね、と実感した1週間が過ぎた。

都内を駆けずり回り、合間にオフィスに立ち寄ったり、田中さんや木島さんに電話連絡を入れたり、息つく暇もなくよく動いた。

光輝くんには、何度か写真を送信した。国技館に行ったとか、料亭の庭がきれいだったとかそんな短文をつけて。

高校生の長谷川先輩とは違う今の光輝くんのことはよく知らない。仕事柄、建物や風景に興味があるかな話題になるかなと思った通り、感想を伝える返信とともに、短いやり取りが夜中に何度か続いたりした。



そんな1週間が過ぎた金曜夜の9時。初めて光輝くんのほうから連絡が来た。

【 お疲れ。まだ仕事?】

帰宅途中だった私は電車の中から返信する。

【 今帰り中。光輝くんは?】

【 帰ろうとして先輩に捕まった。これから飲むって。明日は休み?】

【 明日、成田空港までお見送りして終了。楽しかったけど、疲れた!!!】

【 明日もか。ほんとに丸1週間だな、お疲れ様。】

どう返していいわからずしばらく迷ってから、ありがとうのスタンプを送る。当然返事は来ない。

会えるかとか、聞いてくれないな。電話もないし、次の約束もない。もしかして、こっちから連絡しすぎたら面白くないのかな。追いかけるのが好きなのかもな。考え始めると、止まらなくなる。


彼とのことは、忙しすぎてまだ美和にも報告していない。実際、テキストのやり取りだけ続いても、付き合ってるのかどうかもわからない。

からかわれてる気はしないんだけど、本気にしたらいけないのかもしれない。日が経つにつれて、そう思えてくる。

電車のドア付近に立って窓の外を眺めながら、自信ないな、とつい口に出す。

目新しさを過ぎた後に、彼にとって、面白い以上の存在になれるのかわからなかった。そうなりたいと意識した途端臆病になった自覚もあり、ため息が出た。

だめだなあ私。新しい恋の相手には、やっぱりレベルが高すぎるのかな、先輩は。
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