恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
vol.1

full moonの受難

●●●●●●

「おい」

「きゃ!」

時間は午後3時30分。

全ての授業が終わり、部活棟へ向かおうとしていた私は急に腕を掴まれて、非常階段の踊り場で息を飲んだ。

咄嗟に見上げると、ひとりの男子生徒が唇を引き結んで私を見下ろしている。

長めの前髪から覗く切れ長の眼、通った鼻筋、精悍な頬。

どれもこれも整いすぎている。

同じ人間とは思えない。

……まあ、人間じゃないかも知れないけど。

てゆーかやっぱり……昨日のアレは……。

じゃないと、この端正な男前男子が私に声を掛ける訳がない。

私は、張り付いたように至近距離からこちらを見る彼……雪野翔(ゆきのしょう)を見上げた。
< 2 / 305 >

この作品をシェア

pagetop