御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
失恋秘書、心が千々に乱れる

 結局、雨は降りやまず、クルージングは途中で中止になった。

「近いうちに集まり直そう」というハジメの言葉に皆うなずき、三々五々に帰っていく。




「お二人さん、うちまで送るよ」


 車のキーを指に引っ掛け、くるくる回しながらハジメが雪成と美月に声をかけると、オーナーズルームに残っていた菜穂が、ハジメの背後から抱きついた。


「ハジメちゃ〜ん、私も実家まで送って〜」
「実家? まぁ、ユキんちの途中だしね。いいよ。二人とも大丈夫?」
「ああ」


 雪成がうなずいたので、美月も慌ててうなずいた。もちろん菜穂と同じ空間にいることに不安がないわけではないが、車の中なら二人きりというわけでもない。
 緊張するが、少し我慢をすればいいだけの話だ。


 プジョーの後部座席には、美月と菜穂が乗った。

 最初、雪成が美月と一緒に後部座席に座ろうとしたのだが、
「助手席は酔うからイヤなの」
と、雪成を助手席に座らせた。


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