御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
失恋秘書、故郷に戻る

 ジュッ……。


 なんの前触れもなく煙草に火がつく音がして、森田美月(もりたみつき)は書類整理をしていたデスクから顔を上げた。

 窓際で立ち上がる紫煙に目をみはる。


「あっ……!」


 小さく叫び声を上げ、デスクの引き出しから十センチほどのガラスの小皿を取り出し、窓辺の男のもとに走った。


「副社長、灰皿使ってください!」


 江戸時代から続く老舗寝具メーカー【KOTAKA】本社最上階の重役フロアにある副社長室で、美月は目くじらをたてながら、目の前の長身の男を見上げた。

 ヒールを履いた百六十センチの美月よりさらに背が高い、見上げるほどの長身を贅沢な生地のスーツで包んだ、眉目秀麗な美形だ。


「……ん?」


 切れ長の漆黒の瞳に見つめ返されると、そんなつもりがなくとも、ドキリとしてしまう。


「だから……灰が落ちますから」



< 2 / 323 >

この作品をシェア

pagetop